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日本がペット先進国になれないのはなぜ?ドイツやアメリカとの法規制を徹底比較

日本がペット先進国になれないのはなぜ?ドイツやアメリカとの法規制を徹底比較

日本がペット先進国になれないのはなぜ?ドイツやアメリカとの法規制を徹底比較

「海外にはペットに関する厳しい法律があるけれど、日本は規制がゆるい。」

そんな言葉を耳にして、大切な家族である愛犬や愛猫のために、無添加のフードや体に優しいごはんを一生懸命選んでいる方も多いのではないでしょうか。

 「安全なものを食べさせてあげたい」という真っ直ぐな思いがあるからこそ、ふと「日本の環境はペット先進国とどれほど違うのだろう」と疑問や不安が顔を出すこともあるかもしれません。

犬や猫たちが暮らす環境をより良くしていくためには、まずは現状を正しく知り、私たちにできる小さな一歩を見つけていくことが大切です。

今回は、ペット先進国と日本の法律の違いを紐解きながら、これからのペットの将来のために私たちができることや、安心できるごはん選びのヒントを、ペットフード安全管理者の資格を持つ、高橋ゆきなさんに伺いました。

ペット先進国の特徴は?動物を家族と認める取り組みの例

犬と笑顔の飼い主

ペット先進国という言葉に明確な定義はありません。一般的には、動物を家族や社会の一員として認め、アニマル・ウェルフェア(動物福祉)に関する厳格な決まりがある国を指します。

動物にやさしい国であり、生活の中で当たり前のように動物の権利が守られている国と捉えるといいでしょう。

主なペット先進国としては、ドイツやスウェーデンなどのヨーロッパ諸国、イギリス、アメリカなどが挙げられます。

 ■ペット先進国の取り組みの例

・リードを付けてそのまま一緒に電車に乗れる
・店内に同伴可能なレストランやカフェが多い
・犬の学校やしつけ教室が浸透している
・飼い主になるための免許制度がある地域もある
・犬を6時間以上ひとりにしないよう定める国もある
・犬の保育園やペット同伴出勤が普及している
・飼い主には犬税が課され、動物福祉や地域の清掃費に充てられる
・適切な食事と新鮮な水を与える義務がある

※あくまで一例です。法律は国や州によって異なるため、全てのペット先進国が上記を採用しているわけではありません。

どれも日本ではあまり一般的ではないことばかりで、驚いてしまいますね。

私は日本で、愛犬と一緒に電車で通勤していたことがあります。その際は、必ずキャリーに入れる必要があり、「手荷物料金」を支払うこともありました。

一方、ペット先進国の一部の鉄道会社では、「手荷物」ではなく「ペット用の料金」としての金額が設定されています。

小さな表現の違いですが、動物との共生に関する考え方の違いが表れていると言えるのではないでしょうか。

また、飼い主さんにしっかりと責任が求められる傾向があることがペット先進国の特徴です。

特に犬税が課される国では、経済的負担や飼育責任について考えるきっかけにもなりますね。

衝動的にペットを迎えてしまう人もいることを思うと、税金は終生飼養を意識できる制度なのかもしれません。

日本が「ペット後進国」と言われる理由は?ペットに関する法律と現状の課題

柴犬

日本のペットに関する法律には、「動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)」や「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」などがあります。

これらの法律は、主に動物愛護と同時に人間社会の安全や調和を守ることが目的とされています。

一方で、ペット先進国の法律は、動物の健康やストレス軽減などの、動物福祉の観点を特に重視して作られたものです。

日本はペット先進国のように動物福祉の視点を中心に制定されてはないため、「ペット後進国」と言われる理由のひとつになっていると考えられます。

また、日本の法律では、ペットは家族ではなく「あくまで所有権の対象」です。

こうした位置づけであることから、虐待が疑われる場合でも行政の介入がスムーズにいかないことがあったり、違反が露見しづらいケースもあるという課題があります。

また、違法なブリーダーなどを取り締まる行政の人員不足などにより、法律がうまく機能していないという現状もあるようです。

実際、環境省による2024年の調査では、ブリーダーやペットオークションなど約1,400の事業所のうち、約700(約5割)の事業所で法令違反が認められました。※

違反内容には、台帳不備や8週齢規則違反などが含まれます。

一部の事業者では、子犬や子猫の生年月日の改ざんが疑われる事例も確認されていました。

これは、体が小さなペットや幼いペットに対するニーズの強さが背景にあるのかもしれません。

法律の定期的な見直しや、罰則の強化などが実施されてはいますが、動物福祉の視点と良質なブリーダーによる経営面のどちらにも配慮された制度づくりが求められるでしょう。

※環境省 報道発表資料『ペットオークション・ブリーダーへの一斉調査結果について』(2024年2月15日発表)

ペット先進国のフードの基準を国別に紹介

ペット先進国の人々

ここからは、ペットフードについて、ペット先進国の基準を国別に紹介していきます。

正直、「海外だからいい」「国産だからいい」とは一概に言えません。

ですが、国ごとにどのような基準があるのか知っておくことは、ペットの食事を選ぶうえで大切なポイントです。

ドイツなどの欧州のペットフードの安全基準

ジャーマンシェパードとドイツの国旗

ドイツなどのヨーロッパ諸国では、EUの法律「EU動物由来副産物規則」が制定されています。

この法律では、ペットフードに使用できる動物由来原料の安全基準が定められているのが特徴です。

具体的には、
・食用としてと畜された動物由来であること
・食用に適すると判断されたが、商業上の理由で食用に回らなかったもの
・獣医師の検査を受けている家畜動物であること
・病気などで廃棄されたものではないこと

などがあげられます。

皮や羽、骨、内臓類なども使用が許可されていますが、健康な動物のものであれば使用可能と記載されています。

また、栄養バランスや製造管理については、「FEDIAF(欧州ペットフード工業連合会)」の基準に則っているフードが多いです。

FEDIAFの基準は法律ではありませんが、犬や猫が健康に暮らしていくための栄養基準・品質管理基準を自主的に定めています。

FEDIAFの栄養基準は、世界的な動物栄養学に基づき、常に最新の研究を取り入れて更新されているのが特徴です。

また、製造の際にフードが汚染されないよう、徹底した管理基準も設けています。

原材料表記に関しても表現の細かな規制があるので、FEDIAFの基準に準拠したフードの信頼性は高いと言えるでしょう。


参考:EU規則 No 1069/2009 第10条の公式条文

参考:FEDIAF EuropeanPetFood

イギリスのペットフードの安全基準

ラブラドールとイギリスの国旗

イギリスは2020年にEUを離脱していますが、ペットフードの法律にはEUと同等の厳格な安全基準を設けています。

また、イギリスには独自の法律として「動物福祉法」があることが強みです。

この法律が定める飼い主の義務のひとつに、「適切な食事と新鮮な水を与える義務」があります。

これはつまり、適切な食事管理をせずにペットの健康に著しい負担を与えた場合、動物福祉違反となり処罰の対象になる可能性があるということです。

さらには、「UK Pet Food」という独自の栄養・製造管理・表示の基準を定めている機関が存在します。

栄養基準はFEDIAFのガイドラインを採用していますが、生食のガイドラインも整備していることが特徴です。

生食は、特に安全性が重要視される食事であるため、世界でもトップクラスの厳しい基準を設定することで安全性の確保に努めています。

※参考:UK Pet Food
※参考:英国食品基準庁(FSA)ペットフード製造・ラベル表示・添加物に関する法定ガイドライン

アメリカのペットフードの安全基準

アメリカの国旗柄のスカーフを巻いたミニチュアダックス

アメリカでは、「連邦食品・医薬品・化粧品法」や「食品安全強化法」により、以下のようなペットフードに関する法律が定められています。

・安全な原材料を使用すること
・衛生的な環境で製造されていること
・偽りのないラベルを貼ること

また、この法律を遵守するための細かな規制を制定し、取締りを行う政府機関である「FDA(米国食品医薬品局)」が存在している点も魅力です。

FDAは、ペットフードを食品として扱い、抜き打ち検査で業者を監視しているため、違反が見られた際にはリコールになることがあります。

さらには、州によって法律が異なることもあるのがアメリカならではの大きな特徴です。

例えば、カリフォルニア州などは、ペットフードの栄養やラベル表示基準を定めるAAFCO(米国飼料検査官協会)の基準を州法に取り入れています。

AAFCOの栄養基準は日本でも総合栄養食をつくるために一般的に採用されており、世界で広く参考にされている栄養基準のひとつです。

参考:FDA's Regulation of Pet Food
参考:AAFCO

日本と海外ペットフードに関する安全基準を比較!大きな違いは規制の少なさ


日本

EU

イギリス

アメリカ

主な法律や規制機関

・ペットフード安全法

・ペットフード公正取引協議会

・EU動物由来副産物規則

・FEDIAF

・英国食品基準庁

・動物福祉法

・UK Pet Food

・連邦食品、医薬品、化粧品法

・食品安全強化法

・AAFCO

・FDA


肉の品質

汚染された原材料の使用は禁止

獣医師の検査を受けた安全な動物由来原料など

EU由来の基準を引き継ぐ

安全な原材料の使用と衛生管理を義務付け

危険成分や添加物

20種類の成分の上限値を設定



・安全性が評価された添加物のみ使用可能


・有害物質の30種以上の上限値を設定

・安全性が評価された添加物のみ使用可能


・有害物質の30種以上の上限値を設定


・安全性が評価された添加物のみ使用可能


・有害物質の上限値を設定

栄養基準

法律上はなし
(総合栄養食は主にAAFCOの基準に準拠)

FEDIAF

FEDIAF

AAFCO

製造管理

十分な加熱や乾燥を行うこと

原材料のトレーサビリティなど、EUの厳格な基準によって管理

原材料のトレーサビリティなど、EU由来の厳格な基準によって管理

AAFCOの基準のもとFDAの厳格な基準によって管理

ラベル表示

誤解を与える表現がないよう規制


誤解を与える表現がないよう規制

誤解を与える表現がないよう規制

誤解を与える表現がないよう規制

注意点

海外に比べて規制項目が少ない部分がある

安全なルートで輸入されていない場合は、劣化してしまう可能性もある

安全なルートで輸入されていない場合は、劣化してしまう可能性もある

安全なルートで輸入されていない場合は劣化してしまう可能性もある

上記を見て分かるように、日本のペットフードに関する法律は、海外の法律に比べて規制項目が少ないと指摘されることがあります。

これは、主に制度の考え方の違いです。

ペット先進国では、原材料の由来などについて詳細な基準が設けられています。

一方で日本は、有害物質の基準や製造・表示基準などを中心に安全性を確保する仕組みです。

また、危険成分や添加物の規制に関しても違いがあります。

ペット先進国では、ポジティブリスト(使用できる成分をあらかじめ定める仕組み)で、使える成分を定めているのが特徴です。その点日本では、有害物質の基準や使用規制、製造管理基準などを定めています。

日本と海外では、安全を守るための仕組みが異なると認識しておきましょう。とは言え、日本のペットフードの安全性が低いという訳ではありません。

安全性を保ちつつ、消費者のためにコストを抑える工夫をしているメーカーもありますし、自らの基準で丁寧に質の高いフードを製造しているメーカーも数多く存在します。

参考:ペットフード安全法研究会編『ペットフード安全法の解説』大成出版、2009年
参考:ペットフード公正取引協議会

うちの子に安心できるごはんやおやつを選ぶためのポイント

ご飯を待つチワワ

日本には、様々な国で作られた多様なペットフードが販売されています。

どの商品も各国のルールに則って適切に製造されたものですが、何を選ぶか迷ったときは、以下のポイントをおさえておきましょう。

 ■安全なごはんやおやつ選びのポイント

・使用している食材が明確なものを選ぶ
・健康に不要な成分は無添加のものを選ぶ
・公式サイトで商品について詳しく解説しているものを選ぶ

まず、商品の原材料表記を見て、配合食材を全て記載しているものを選ぶのが基本です。

配合食材が不明確では、どのような食材を使用しているのかわからないだけではなく、アレルギー対策もできません。

また、できるだけ添加物を使わずに高い品質を維持している商品は、そのレシピや食材の質、製造工程にもこだわってつくられていると考えられます。

そういった商品の魅力をしっかり公式サイトで公表しているものであれば、より信頼できるでしょう。

まとめ|日本をペット先進国にするために私たちができること

飼い主と寄り添う犬

ドイツやイギリスなどのペット先進国では、動物の生活と権利を守る法律が制定されています。

日本で暮らす私たちからすると、犬と電車に乗れたり、フードの安全性が高かったりと、羨ましく思う点も多いでしょう。

「日本もペット先進国になってくれたらいいのに…」と私も思ったことがあります。

ですが、日本にも動物愛護やペットフードの安全確保を目的とした法律があることを忘れてはいけません。日本と海外では、制度設計が異なるという点を理解することが重要です。

そして今後、海外のように動物福祉を強化した制度を目指すには、私たち飼い主1人ひとりの意識改革が大切になると言えるでしょう。

 

■私たちができること

・ペットのしつけを学び、教える
・散歩や外出時のマナーを守る(排泄・吠え・抜け毛など)
・展示販売ではなく、保護犬の譲渡会や良質なブリーダーからお迎えする
・ペットフードは予算内でできるだけ良質なものを選ぶ
・動物虐待関連のニュースに関心を持ち、身近な人と共有する

小さなことですが、ペットを愛する全ての人がこうした意識を持つことで、国全体の意識が徐々に変わっていくはずです。

実際、ペットフードに関しては、数年前よりもずっと良質なものが増えたように思います。

「安全なものを与えたい」という飼い主さんの思いが、行動となって現れた結果でしょう。

私自身も、日本で暮らすペットたちの環境がより良いものになるように、今後も活動していきたいと思います。

高橋さん、ありがとうございました。

「日本をペット先進国にするために、まずは仕組みの違いを理解し、飼い主としての意識を変えていく」という前向きな視点に、深くハッとさせられました。

完璧な環境をすぐに求めることは難しくても、マナーを守ったり、フードの原材料を少し意識して選んだり。

 私たちが日々の暮らしの中でできる小さな選択の積み重ねが、大切なパートナーたちの心地よい未来へとつながっていくのですね。

最初から大きなことをしようと身構えなくても大丈夫です。 愛するわんちゃんやねこちゃんとの歩幅を大切にしながら、できることから少しずつ、優しい社会を一緒に育んでいけたらいいですね。