
愛犬がシニアになる前に!知っておきたい食事管理の基本とよくあるお悩み
ふと愛犬の顔を見つめたとき、口元の白い毛が増えていたり、以前よりも寝ている時間が長くなったように感じたり。
一緒に過ごす時間が長いからこそ、ふとした瞬間に訪れる小さな変化に、胸が少しきゅっとすることもありますよね。
犬の7歳は、人間でいうともう立派なシニア期。体の中では、目に見えない様々な変化が少しずつ始まっています。
これまでと同じ食事では、気づかないうちに体に負担をかけてしまっていることもあるかもしれません。
今回は、そんなシニア犬の食事管理の基本について、犬の管理栄養士である高橋ゆきなさんにお話を伺いました。
愛犬とこれから先も穏やかで健康な日々を重ねていくための、優しいヒントになればうれしいです。
シニア犬に食事管理が重要になる理由

シニア犬の体の中では、加齢の影響で様々な変化が起きています。そのため、これまでと同じ食事では体の負担となる可能性があり、体調に合わせた食事管理が重要です。
シニア期に起こる体の変化
・消化器官の機能低下
・肝臓や腎臓の機能低下
・免疫力の低下
・基礎代謝の低下
・活動量の低下
・嗅覚など感覚機能の低下
・噛む力や飲み込む力の低下
など
このように、多くの機能が徐々に低下するシニア期は、お腹のトラブルが起きやすくなり、食べたものの栄養も吸収しにくくなっていきます。
そのため、病気にかかりやすくなったり、痩せてしまうことも珍しくありません。
一方で、基礎代謝や活動量の低下により、太ってしまう子も中にはいます。
そして、病気ではなくても、嗅覚や噛む力の衰えなどから、「食事を楽しめない」「食べたくてもうまく食べられない」という子も出てきます。
愛犬がどのような状態になっても、飼い主さんが食事の内容や量などをしっかり管理してサポートしてあげなければなりません。
少し難しく感じるかもしれませんが、基本のポイントを分かりやすくご説明しますので安心してください。
シニア犬の食事管理で覚えておきたい5つの基本

シニア犬の食事管理の基本ポイントは以下の5つです。
5つのポイント
①ドッグフードは高たんぱく質がおすすめ
②愛犬に必要な食事量を把握しておく
③食事の回数は愛犬の体調や食欲に合わせる
④食べないときはまず動物病院へ
⑤ウェットフードも迷わず取り入れる
それぞれ詳しく説明しますね。
①ドッグフードは高たんぱく質がおすすめ

シニア犬のドッグフードは、良質なたんぱく質をたっぷり含んだものを選ぶのがおすすめです。
たんぱく質は体のあらゆる部位を構成し、筋肉量や免疫力の維持に欠かせない栄養素です。
シニア犬は栄養を取り込む力が落ちているので、たんぱく質が不足しないよう配慮してあげなければいけません。
ただ、たんぱく質であれば何でも良いわけではないので注意が必要です。
品質の良い肉や魚をメインにしたフードからたんぱく質を補給しましょう。
ドッグフードがあまり好きではない愛犬には、茹でたささみなどを適量トッピングして、たんぱく質をプラスするのもいいでしょう。
※腎臓病の犬などは高たんぱく質の食事が不向きなケースもあります。動物病院から食事指導を受けている場合は、必ず獣医師の指示に従ってください。
②愛犬に必要な食事量を把握しておく

シニア期に入ると、成犬期と同じ量の食事では太ったり痩せたりしてしまう可能性があります。
これは、基礎代謝や活動量が低下することや、1度にたくさん食べられなくなることが関係しています。
必要な食事の量は1頭1頭異なるので、愛犬に合う食事量を計算しておきましょう。
専用の計算式を覚えるのは少し大変だと思いますが、「ドッグフード 給餌量 計算」などで検索すると、自動で計算できるサイトが見つかります。
また、フードを毎回計量して与えていない人も意外と多いです。ドライフードは数粒でも差が出ますし、ウェットフードなら摂取カロリーに大きな差が出でることがあります。
愛犬に必要な給餌量を把握して、食べ過ぎない・食べ残さないようサポートしてあげてくださいね。
③食事の回数は愛犬の体調や食欲に合わせる

成犬期の犬は1日2回の食事が基本ですが、シニア犬は愛犬に合わせて1日3回以上に回数を増やしてあげましょう。
少量ずつ食べることで消化に負担がかかりづらくなるので、シニア犬に多い消化不良による下痢や嘔吐を防ぎやすくなります。
また、回数を分けると1回の食事量が少なくなり、食欲が湧きやすいというメリットもあります。
空腹時間も短くなるため、朝方に黄色い胃液を吐く場合の対策としてもおすすめです。
私の愛犬も、食事を長らく1日3回にしていました。1日2回だった頃よりも、食欲や体調が落ち着いていたように思います。
特に、以下のような悩みがあるわんちゃんは、食事回数を増やしてあげるといいでしょう。
こんなお悩みに
・一度にたくさん食べられなくなった
・食べムラする日が多い
・嘔吐や下痢、便秘になりやすい
・体重や筋肉量が落ちてきた
・夜遅くや早くにお腹を空かせて起きる
1日に必要なエネルギーを補えるのであれば、何回に分けて与えても問題ありません。
シニア犬のその日の体調や食欲に合わせてあげてください。
④食べないときはまず動物病院へ

シニア犬に特に多い悩みと言えるのが「ドッグフードを食べない」です。
ドッグフードは食べないのにおやつは食べる子もいれば、何をあげても日によって食べたり食べなかったりする子もいます。
シニア犬がごはんを食べないときは、元気があってもまず1度動物病院を受診しましょう。
検査のうえ、隠れている病気が見つかることもありますし、何もないのであれば老化現象のひとつと捉えて対策が立てられます。
私の愛犬も、癌を発見したきっかけが「いつもより食べづらそうにしていて、食が進まない」というものでした。
もちろん、食べづらそうにしている全ての犬が癌だということではありません。
ですが、「食べない」のには何か必ず理由があります。病気を除外するために、まず動物病院を受診しましょう。
食べないときの対処法は、記事後半の「食べムラがあるときはどうしたらいい?」で簡単に解説しています。あわせて参考にしてください。
⑤ウェットフードも迷わず取り入れる

シニア犬になると、歯周病に悩んでいる子、歯がない子、硬いものを噛めない子なども増えてきます。
また、嗅覚の衰えなどからドライフードでは食欲が沸かず、食べてくれない子もいるでしょう。
そんなときには、迷わずウェットフードに切り替えたり、ウェットフードをトッピングしてあげてください。
ウェットフードは、柔らかくてシニア犬が食べやすいことに加え、水分摂取量を増やせるというメリットがあります。
シニア期の犬は喉の渇きを感じづらく脱水しやすいという特徴があるので、食事からも水分を補給できれば、健康の大きなプラスになると言えるでしょう。
よく、「ウェットフードはドライよりも歯が汚れやすいから」と敬遠する方がいます。
ですが、シニア犬にとっては、歯の汚れよりも食べて栄養を補給することが大切です。
それに、歯磨きやお口の環境を整えるおやつなどをうまく使えば、歯の健康サポートもできますよ。
もしウェットフードでは食費が気になるというときは、ドライフードをふやかして与えましょう。
シニア犬の食事管理でよくあるお悩み

ここでは、シニア犬の食事管理について、多くの人が迷いがちな質問をピックアップして回答していきます。
シニア犬は食べることが特に大切なので、ぜひチェックしてくださいね。
シニア犬用のフードをあげなきゃだめ?

必ずしもシニア犬用のフードでなければならないわけではありません。大切なのは、愛犬の体質に合う栄養バランスであり、必要量を食べきってくれるかどうかです。
ただ、「今のフードが体質に合っているかわからない」「食べないときもある」というときには、シニア犬用から探してみるといいでしょう。
シニア犬用フードは、シニア犬が栄養を取り込みやすいように配慮されています。若々しさを保つ成分や、関節の健康をサポートする成分を配合しているフードも多いです。
また、体重管理がしやすいように、脂質も抑えられているフードが多くなっているので、活動量が減ってきたシニア犬などには特におすすめです。
食べムラがあるときはどうしたらいい?

できるだけ食べてもらえるような工夫をしながら、どうして食べないのか原因を探っていきましょう。
食べてもらう工夫
・与え方を変える
(お皿の高さや角度を変える、手で与える、食事回数を増やすなど)
・食感を変える
(ふやかす、ふやかしてミキサーにかける、トッピングするなど)
・フードを変える
(ウェットフード、総合栄養食の手作りフードなど)
ただ、シニア犬になると、脳の機能の低下から頑固になり、「自分が食べたい時しか食べない」ということもあります。
中には、1日のうちでフードローテーションをしないと食べてくれない子も。
愛犬がご飯を食べてくれないと、飼い主さんも辛いものです。
心配で疲れてしまいがちですが、シニア犬にはつきものだと思って、諦めずに食べてくれるもの・気に入る食事方法を探していきましょう。
ただし、無理やり食べさせると喉に詰まらせてしまう可能性があり危険です。
食事の時間が嫌いになって余計に食欲が落ちてしまうこともあるので、絶対に無理強いはしないようにしましょう。
ちゃんと食べてるのに太らないのはなぜ?

シニア犬になると、消化吸収能力の低下や筋肉量の低下、病気の影響などで、食べていても痩せてしまうことがあります。
その場合は、かかりつけの獣医師に相談のうえ、1日の給餌量を増やしてあげたり、消化に優れた高カロリーのフードを与えるようにしましょう。
いきなり与える量を増やしすぎると消化器に負担をかけてしまうため、少しずつ摂取カロリーを増やすようにしてください。
食べやすい食器はある?

フードボウルや食事台には色々な種類があります。うまく使って、愛犬が食べやすい姿勢に合うものを選んであげましょう。
高さや角度が調節できるものや、マズルの長い犬用・短い犬用、手で持って与えられる食器なども販売されていますよ。
なかなか愛犬の高さに合う食器や台がないときには、家にある本などを適度な高さになるまで積み重ねて使う方法もあります。
それでもどうしても食べづらいようであれば、飼い主さんが手から食べさせてあげても問題ありません。
シニア犬の食事は、基本を大切にしながら「うちの子仕様」に

シニア犬は、加齢による様々な変化から、食事管理の注意点が増えていきます。
大変だと感じることもあるかもしれませんが、ここまで愛犬と暮らしてきた飼い主さんたちなら、きっとうまくできますよ。
ここで食事管理の基本ポイントをおさらいしておきましょう。
5つのポイント
①ドッグフードは高たんぱく質がおすすめ
②愛犬に必要な食事量を把握しておく
③食事の回数は愛犬の体調や食欲に合わせる
④食べないときはまず動物病院へ
⑤ウェットフードも迷わず取り入れる
基本をおさえたら、あとは愛犬の体調や気分に合わせて調整してあげてください。
「うちの子は今どうかな?」と日々の様子を見ていてあげることが大切です。皆さんの大切なご家族が、いつまでも元気でいてくれますように!
高橋さん、ありがとうございました。日々変化していく愛犬の様子に戸惑うこともありますが、食事の回数を工夫したり、ウェットフードを取り入れたり、今できる優しいアプローチはたくさんあるのですね。
「こうしなきゃ」と完璧を目指して焦らなくても大丈夫です。
愛犬の今の気分や体調をそっと見つめながら、その子に合わせた心地よいペースで、毎日の美味しい時間を一緒に作っていけたら素敵ですね。
大切なご家族とのごはんの時間が、これからも温かく穏やかなものでありますように。



